アイドルはあいどる?/倉持知子

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 倉持知子。私がファンレターを送り、唯一直筆の返事をもらった漫画家である。往復葉書の返信部分に、鉛筆でイラストをきちんと描いてくれた。私はとても嬉しくて、その葉書にラップを巻き、アルバムに貼った。
 「こわれた和彦くん」という漫画がデビュー作だと記憶している。デビュー作は「ジキー・チャイルドを好きな子」花とゆめ13号(1976)のようです。00/8/8追記。 記憶だけなので曖昧だが、好きな人に似ている石膏像が壊れて、その破片を光にかざすようにして眺めているシーンとか、最後は主役の女の子の横顔で終わっていたことなどをおぼろげながら覚えている。
 私はその作品を気に入って、倉持知子の次の作品を期待して待った。それが確かLaLaに掲載された「アイドルはあいどる?」なのだった。
 この作品は、学園のアイドルに対して、「アイドルなんてあいどる(怠け者)なのだ」といった中傷をするシーンがあって、それがタイトルになっていた。「idol」と「idle」の違いを、「アイドル」と「あいどる」で区別するという、かなり強引なもので、考え落ちと言った趣の作品だった。出来はともかく、読んでいて引っかかったこの「あいどる」という言葉。当時まだ小学生、もしくは中学入りたてだと思う。「アイドル(idol)」という言葉は知っていたとしても、「idle」なんか知るはずもない。
 私は素直にそういった区別のために「あいどる」が平仮名なのだと理解するだけでいいものを、「〜しておる」の短縮で「〜しとる」、しかもそれが濁って「〜しどる」、のように言葉を変化させて、無理やり「あいどる」を動詞として収めようとした。何のためかわからないが。

 「idle」は後に英単語として認識したが、コンピュータを使っててもよく出てくる。たまに、「idleしてましたね」と打つべきところをつい「idolしてましたね」と打ってしまうことがある。そういう時には、頭の中に相手が高橋由美子になってしまう絵と、この「アイドルはあいどる?」という言葉が踊る。
 この作品よりあとに白泉社系で描いたか記憶にない。割とすぐ、この人は創刊された「ぶ〜け」に移動した。私は倉持知子目当てで「ぶ〜け」も創刊号から買い始めた。創刊号の「デミアンの白いページ」を読んで、私も白いページを汚したくない、と思った。それでファンレター書いたのかな? ぶーけも頑張って読んでいたけれど、結局続かなかった。「青になれ!」は全部読んでいないと思う。バスケまんがのさわやかさが苦手だったんだろうか。

  • 「ジキー・チャイルドを好きな子」花とゆめ13号(1976)デビュー作
  • 「こわれた和彦くん」第1回 アテナ大賞第2席
  • 「アイドルはあいどる?」 LaLa 1977年9月号掲載