「死んだら何を書いてもいいわ」

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 萩原朔美著「死んだら何を書いてもいいわ」を読んだ。著者に関しては「ビックリハウスの初代編集長」、萩原葉子に関しては「萩原朔太郎の娘で作家でダンスするおばあさん」程度の知識しか持ち合わせていなかったが、タイトルに惹かれて図書館で借りた。
 サブタイトルが「母・萩原葉子との百八十六日」とあったから、その同居していた時の介護の部分が主なのかと思っていた。たぶん私は、全編、介護や親の老いの部分の生々しい"暴露"であることを期待していたのだけれど、良くも悪くもそういう本ではなかった。どちらかというと、同居を始めた途端にあっけなく死んでしまった親の遺品を整理しながら、静かに振りかえっているという本だろうか。
 印象的だったのはモノの整理の話。多分、一緒に住むためにあふれんばかりのモノを捨て、やっと一緒に住み始めた途端に亡くなった、という感じなのか、モノの話以外の同居した時の話があまりないのだった。少なすぎるくらいに少ない。同居した時代以外の方が長いわけだから、その思い出話に書きたかったことが多すぎたのか。
 仕事をしなさいと言われていたという件も印象的だ。仕事というのは、経済活動ではなく創作活動のことで、お金を稼ぐことを仕事をみなさないという一般の親と違ったところ、なんだか若干羨ましいような気がした。実際そう言う親だったら反発しそうだが。それと、本人が生前に著者が書いた文章に手を入れたものも掲載されていて面白い。
 いろんなシーンがあっちこっちに書かれていて、意外と一つ一つが短くて淡白だ。もっと順序立てて書いてもらえると読みやすいし呼んでいて没入できそうなのだが、こういう淡々とした感じは、著者の親子関係を象徴するものなのかもと思った。