一枚のハガキ

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 すっかり書きかけのままで放置してあるものがいくつかあるので、とりあえずそれを先に。

 かなり前の話になるが、2月11日、建国記念の日に外出をした。

 外出くらい別に取り立てて書くことでないかと思われそうだが、私はそれを心待ちにしていた。私の誕生日は2月10日で、この外出は私の誕生日プレゼントという位置づけ。だから、私は堂々と一人で外出していい。3歳児を置いて出るのに後ろめたさは感じなくていい。ほとんど囚人みたいだが、それが今の私の生活。年に一度、それができる。
 去年は一年間に美術館へ行ったのが一回、舞台が一回。ライブや映画館は0回。そう考えるとバランスと土曜の昼間の外出ということを考えると、映画というのがいいような気がした。もともと映画はそんなに見る方ではないが、奈良へ来てからファミリーな映画しか見ていない。自分が見たい映画をすいている小さい映画館で見る、そんな昔やってたようなことを久しぶりにやってみたくなった。

 といっても、下調べを綿密にする時間もなかったので、奈良を脱出してとりあえず難波へ向かった。iPhoneもあるし困ったらその場で調べればいいという気軽な気持ちで出かける。大人ひとりだとそれができる。結局ついてから調べたところ候補は二つあり、その中の一つが梅田でやっていた「一枚のハガキ」なのだった...。

 と、ここまで書いて3カ月近く放置していたわけになるが、テアトル梅田でやっていた「一枚のハガキ」はいい息抜きになった。小さい映画館ですいていて、客層が私よりも上に見える人が多かったという、騒がしくなりようの無い雰囲気。
 新藤監督98歳の時の作品で全く予備知識もなかったけれど、面白かった。余計なものがそぎ落とされているとでもいうんだろうか。映画が最小のステップで構築されているというんだろうか。私自身映画をそんなに見ないのでどう表現したらよいのかわからないけれど、淡々と物語が進行していく。説教臭さもなく、ああこれが本当に経験してきた人が98歳になって作った戦争映画で、きっともうこういうニュアンスの戦争映画ってなくなるのかもしれない、と思った。

 普通の人はその作品を見たくて時間を作って映画館へ足を運ぶのだろうが、私は一人の時間を有意義にそして自由に過ごすためにこの映画館へ行った。そしてこの映画を選んだ結果、素晴らしい休日を過ごせた気がする。
 98歳の人にとったら大竹しのぶの年でも若々しくて女盛りだよな、などとふと思い、まだまだ私は小娘じゃん、と無理やり思ってみた。そんな素敵な誕生日プレゼント。