物語

 NEWSのSTORYツアーの配信が決まり、「カナリヤ」と「ビューティフル」と「チンチャうまっか」がトリプルA面シングルになる。ついにこの日がきたかという感じ。
 4人で作ったアルバムのライブを3人がどう見せてくれるのか、4が3になるSTORYがどう完結させられているのか。喜びと楽しみと不安と寂しさが入り混じった気持ちだ。

 加藤君のいうように「アイドルは物語」なんだなと思う。自分はあくまでNEWSの歌が好きで聴いていると信じてたけど、よく考えたらきっかけは「メイン2人の脱退」だったし、遡ってあれこれ見て少年時代のKKKの3人に興味を持ち、検索して見つけた「青い独り言」の書き起こしを読み、こんな感性抱えながらアイドルしているって大変だな、と、加藤君を中心に見るようになったのだから、その時点でもう物語を追いかけていたのだった。当時ネットでは加藤君は歌とダンスの評価が低く、でもプライドは高くて自分がエリートだと言っていると揶揄されていた。私は6人時代のアルバムを聴きながら、この錦戸君の歌割部分は加藤君になるのかな、加藤君がどう化けていくかが鍵なんだろうな、なんて考えていた。(その頃の日誌がこれ。今読むと偉そうなこいつ何者)私が好きな曲の一つに「ラビリンス」があるのだが、この曲はコヤシゲのパートが魅力的で、メイン二人の声を引き算しても違和感が無かった。それを聴きながら私は4人のNEWSの歌を思い描いていた。

 手越君の著書でコヤシゲの当時のパフォーマンスがテゴマスに及ばなかったという話が書いてあって「メンバーを下に見ている」と反感を買っていたけど、あの時なんの思い入れもなくNEWSを見始めた私もコヤシゲについて同じように感じていた。実際、チャンカパーナリリース時の歌番組出演の時は、コヤシゲは地上波は全部リップシンクで、音源でなかったのは少年倶楽部プレミアムだけと記憶している。ライブ時も二人は音源だったりすることもあって、ジャニーズのライブってこういうものなんだな、と当時思っていた。彼らが常に生歌になったのはいつ頃からだっただろう。EMMAの頃は既に手越君が二人の歌の進化を凄く褒めている(オトナのNEWS vol.79)ので、それよりは前だろうか。

 加藤君の歌はめきめき上手くなり(これについては省略しないと長くなる)、作家ならではの独自の世界観を見せてくれるようにもなった。最初彼に感じていた「苦悩する青年の生々しさ」も執筆で徐々に昇華されていったのだろうか。溢れ出して叩かれるようなことも無くなった。歌でも、人としても、成長物語を見せてもらえたように思う。

 今年のSONGS OF TOKYO で聴いた「ビューティフル」は増田君1人に比重がかかるわけでもなく、3人全員がバランスよく調和していた。力が適度に抜けてピースフルな雰囲気が暖かかったし、増田君の表情豊かな歌声と、加藤君が高音部、小山君が低音部を担当する姿を見て、これが3人のNEWSなんだ、と思った。このコヤシゲがリップシンクしていたなんて嘘みたいだな。


 これまで私が加藤君を中心に見てきたものが「NEWSの物語」だったのなら、予想もしていなかったメンバーの脱退を乗り越え3人で復活するNEWSだけを追い続ければ済む。降板した人は今シーズンから二度と登場しなくなるだけだ。でも私が見ていたのは、タイミング的に「4人の物語」だった。だから、3と1に別れた今も4人の群像劇として見続けようとしているところがあるのかもしれない。もう今はNEWSのメンバーでは無くなったけれど、コヤシゲの歌唱力に期待し、歌唱力向上に喜び、シゲの歌が頼りになると言い、小山くんの歌を心理面でも支え、妥協せず攻め続けていた自由な彼の存在が、3人のNEWS、特にコヤシゲの歌唱力に受け継がれているように感じる。

 3人は以前からいろんなことを十分わかっていたのだろうと思う。昔の記事の4人それぞれの言葉や、4部作の存在や、4人が作り上げていた音楽性が高くて多幸感しかなかったライブも、そういう物語として読み返してみると別の色を帯びてくる。


 NEWSが3人になって、どう考えても重要な局面にあるのは間違いない。そんな今、3人が配信で見せてくれるSTORYは、彼に触れず、4を一瞬も感じさせない構成になっているのかもしれないし、彼に対する3人の深い愛情を感じるような構成になっているのかもしれない。いずれにしても、「今の3人にとっての最善がそれである」ということだから、どんなSTORYだったとしても、私はその事実に涙してしまいそうだ。