名古屋へ行った話

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2月10日に56歳になった。50歳になったとか書いたのがもう6年も前かと思うとゾッとする。時間軸の分解能がおかしなことになっているのを痛感するから。

この20年くらい、毎年私は誕生日付近に誕生日特権で自由行動をしてきた。その日は映画館やライブハウスや美術館へ行って、嬉々としてここに感想を書いた。昔はその一日を楽しみに一年過ごしたようなものだったけれど、最近はコロナもあって権利を行使していなかった。でも、今年は、久しぶりにその権利を使って外出をした。手越くんのライブだ。

私は手越くんの全国ツアーの大阪2日目だけチケットを買って、下の子と2人で行く予定でいる。しかしコロナがまた流行り始め、中学校でもちらほらと感染者が出ていて、大阪公演に行けない可能性もあるなあ、と心配になっていた。

去年、私は加藤さん主演の「モダンボーイズ」のチケットが当選し、大阪公演までネタバレも一切我慢して楽しみにしていた。でも結局大阪公演は中止になった。私はそれがちょっとトラウマのようになっている。それまで複数公演を見に行くことに必要性を感じていなかったが「本当に見たいものは保険をかけておくべき」と思い知った。(あの頃、モダンボーイズ東京公演に行けたかどうかはわからないが。)

手越くんのツアーの宮城公演終了後、感想を探して読んだ時、去年のZeppツアーより進化していると書かれているものを見た。その時、「それは相当凄そうだから絶対に見たい」と思った。だが、モダンボーイズの件が甦る。この先また中止になってしまう可能性がないわけではない。私や子供が感染したり濃厚接触者になる可能性だってある。そしたら行けなくて、また後悔するかもしれない。

宮城の次は名古屋公演だ。名古屋は大阪の次に奈良から近い。そして、2月6日なら、少し前倒しであの「誕生日特権」が使える。保険をかけるとしたら、その名古屋公演しか考えられなかった。私は家族に、名古屋に行きたい、万が一移動中に感染する可能性があるかもしれないが、仕事の日程的にどうだろう、部屋を数日隔離するなどが必要か、など対策などを相談した上、了承をもらってトレードに申し込み、名古屋の昼のチケットを1枚手に入れた。

だが、その公演について前日の夕方に連絡が入った。関係者にコロナ陽性者が出たため延期になる、振替公演にいけない人にはチケットの払い戻しをする、そして、この日程しか来れない人のために、手越くんと仲間のミュージシャンと陰性が確認できたスタッフで「無料のミニライブをする」という内容だった。

悩んだ。

悩んだポイントはいくつかあるけれど、一つは「陰性の確認の取れたスタッフでの無料のミニライブ」という、あまり前例のないイベントであるという点。万全な体制でなかった場合、現場が混乱してたら困るな、と素直に思った。もう一つはそれとは全く関係なく、雪で新幹線が遅れそうだということだった。昼前に出て夕ご飯までにサクッと行ってくるということで了承をもらったのに、遅れたら夕ご飯問題が出てきてややこしい、というコロナ無関係な家庭の事情。

夫曰く「そのミニライブは遠くからわざわざ前乗りで見にくるようなコアなファン向けのサービスだろう」。私はそういうコアなファンではないのだから行かなくても良いのではないか、という理屈で、全くその通りなのだった。通常のライブではないし、待てば振替公演はある。損得でいったら行かなくても何の損もない。選択肢が一つ増えただけだ。正直なところ、行きたい気持ちは当初の半分くらいになっていた。

でも、結局私は行くことを選択した。雪に関しては近鉄特急を使うと回避できる。ミニライブなので予定より早い時間に乗れる可能性が高いので夕ご飯の時間に多分間に合う。近鉄特急は座席を見る限りその時間帯はガラガラで密になる心配もない。密になる可能性があるのは名古屋駅の乗り換えくらいだろうが、今そこまで混んでいるとは考えづらい。それに、行く予定の大阪は平日だから、グッズはあらかじめ名古屋で買っておく方が安全だ。

それとは別に、純粋に、手越くんがどんなライブをするのかを見たいという気持ちもあった。独立してから配信でいろんなライブを見させてもらったけど、ハズレだったことがないのだ。
長年、この「誕生日特権」でしか快く送り出してもらえない生活を送っていた私にとって、この権利を放棄したくない、という気持ちもあったかもしれない。そんなこと、私以外の人にはピンとこないだろうが。

とまあ前置きが長いが、名古屋の無料ミニライブ昼公演を見たよ、という話。

行った立場で一つちゃんと書かないといけないなと思ったのは、手越くんがインスタで7人のスタッフでやりきったと書いていたけれど、それはおそらく内部的な棲み分けの彼周りのスタッフ数なのだろう。客の立場からすると現場は手慣れたプロモーターサイドのスタッフらしき、もっと大人数による仕切りがされていた。私が見た範囲では混乱するような場面もない。会場の敷地が広いこともあり、密になることもない。物販も1人ずつ検温消毒の上屋外から室内に入るスタイル。導線の案内の表示も問題なく、病的に方向音痴の私も物販に回ってから入場するまで、誰にも話しかけずに済んだ。入場も当然のようにディスタンスと再度の検温消毒。

会場への行き帰りの道程に密な瞬間がなく、さらに会場でも一度も密にならなかったため、いやこれで罹患したらオミクロン恐ろしすぎないか?と思うような状況だった。実際現在も元気だ。

どんな場合でも「ヲタクのいうことは信用されにくい」というケースがあるのは知っている。私もライブ二カ所のチケットを買ったファンなので「準ヲタク」くらいに周りからは思われるんだろう。私が、プロモーターしっかりしてたし、会場の感染対策問題無かったよ、と言っても、否定派の人たちには届きはしないと思う。そもそも、否定派の人にとって、手越くんのライブなんて不要不急の外出以外の何物でもないだろうから、私も行った時点で言葉は悪いだろうが頭のおかしい共犯者扱いだろう。


それはさておき、ライブは、シンプルかつ暖かなものだった。ボーカルとキーボードのみで、全く飾りのないステージなのだが、会場が手越くんの歌とSinさんの演奏でひとつになっている一体感があった。とにかく手越くんの表情が柔らかい。NEWS時代のライブで強い光を放っていた手越くんとは違ってもっと波長の長い温かい光を放っている感じ。歌はもちろん上手いのだが、音がシンプルな分、声の美しさを堪能させてもらえた。アルバム曲からアコースティックライブで聴けると思わなかった曲も数曲歌ってくれた。ボーカルはもちろんアレンジも演奏も良くて、これを短時間で実現できるSinさんにプロの凄さを感じた。一言で言うと、心が満たされたライブ。来てよかったな。誕生日万歳、家族ありがとう、と思った。

手越くんがソロのボーカリストになる経緯は少し特殊だったのかもしれないけれど、独立してからの彼の歌を配信などで可能な限り聴いてきた立場からすると、ソロとして力をつけている、その成長を毎回感じられるのが嬉しい。推しているグループアイドルのメンバーだった人が音楽で独り立ちしていく過程を見られるのは幸運なことだ。


余談だが、行く前日に、こんなことを夫と話していた。
「無料のミニライブをやったらやったでたたかれかねないのに、やっちゃうところが手越くんなんだよなあ...」

ライブに行くと彼が本当にファンとライブが大好きだというのがわかる。あの表情がそこでしか見れないというのは、4人時代のNEWSのライブを知っていたら心当たりがあるのではないだろうか。その愛情が彼のストロングポイントであると同時に、裏を返せばドライになりきれないという意味で急所にもなりうるのかもなとは少し思う。
全部手越くんらしいっちゃらしいのだが。

気質がかなりアスリート寄りだから、ツアーでは相当な高難度な歌とダンスを、練習して決めてくるんだろうなと期待が膨らむ。それを手越くん大好きな下の子と並んで絶対見たいのだった。

コロナに対する対策の強化もされ、問題なく、大阪公演が開催されますように。