「CHECKMATE」感想メモ(アルバム編)

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手越くんのセカンドフルアルバム「CHECKMATE」が4月5日に発売され、現在、そのアルバム曲を中心にしたツアー中だ。私も先日大阪両日へ行った。ライブの感想はまた別に書くとして、ここではアルバム各曲を聴いて感じたことをメモ。

1. OVER YOU(feat.マイキ)
8th配信シングル。この曲が配信された頃ツイッターでこんな感想を書いた。

この歌は応援ソングといっても熱エネルギーというよりは圧倒的に光エネルギーなので、暑い中聴いてても息苦しくならないので助かる。前向きが凄い勢いで連射されるけど、私のような超ネガティブな人間に刺さる言葉もちゃんとあるのがいいなと思った。(2022/7/13)

1つのストーリーで盛り上げて励ますのではなく、どちらかというと強い言葉が詰め込まれた「応援bot」のような構造なので、いろんな人が対面する様々な状況に刺さりやすいように思う。私の場合「人の感情も立体で 一直線じゃわかんないだけ」と「何年何十年経ったって思い出す後悔が 誰にもあってさ それを何度も 抱きしめて生きていくんだ」の2箇所だった。前者は、これを手越くんに歌わせるマイキが面白いなと思うし、後者は若いのによくそれを知っているね、と思う。手越くんの光の声質が素晴らしくハマる曲。

2.Just Right
聴いてて気持ちいい軽快な曲。グループ時代はほとんど聞くことがなかったラップが新鮮。かなりメッセージ性が強い歌詞なのだが、言葉の選び方と歌詞への混ぜ込み具合が絶妙なので押し付けがましく感じない。特に大サビの歌詞が印象に残る。

3.MAZE WORLD
7th配信シングル。初っ端の不協和音がかっこいい。リリースされた時はシンプルすぎて少し地味に感じたけど、去年の米フェスの配信とMusic Connectツアーを見てこの曲の良さを認識した。絞り込まれたものがピタッと合って一瞬で空気を変える感じ。想像以上にライブで映える曲。

4.ラヴァゲラ
タイトルからは怪しい曲を想像するが全然違って、可愛らしい優しい曲。ファルセット多めで軽めに歌っているからか、とても暖かい。歌い方でもいろいろ変わりそう。
手越くんの声は一曲目のような青白い強い光だけではなく、こういう暖く優しい赤みのある光も放てるのも魅力。

5.HOTEL
9th配信シングル。全編英語歌詞曲。
全編英語詞というとおしゃれな曲が多いこのご時世、さすが手越くんおしゃれに見せるとか眼中にない。歌詞も曲も振り付けも、全てにおいていい意味で明るくて能天気。部屋を取ってと言われてホテルごと丸ごと借りきる富豪っぷりなのに「ホールホテー♪」のあたりのメロディの庶民的温泉ホテル感に、育ちが良くてちょっと世間とずれてる、人のいい彼氏、を感じる。4番目のラヴァゲラからこの曲への流れは、ただひたすらに平和なのだった。

6.Peaceful for you
4、5で続いた平和がこの曲で世界平和のスケールに広がる。ピースフル。

7.この手とその手
何度も書くが私は性格に問題があるのでいい曲を受け付けない傾向がある。アルバムで大抵苦手に思うのがわかりやすい良い歌なのだ。だから、個人的にタイトルから一番不安に思っていた曲がこれだった。
でも、この曲は中学校の卒業式で歌っている動画を見たのが初聴きで、現場の空気に合わせた歌唱が流石に素晴らしかったからか、私の苦手意識もすっかり消えた。良い歌を素直に受け入れられる人の心を呼び起こしてくれたということだ。こうやって良い歌アレルギーを一つ一つ克服できるのは助かる。

8.MAKE ME ALIVE
7がおわるやいなや調和や平和を突き破るように間髪開けずにこの曲が来るのが素敵。ロック。

9.Comfort Zone
10th配信シングル。このアルバムから先行リリースされた曲。
本人も言ってたと思うがグループで歌うタイプの大変複雑な構造。パーツパーツ歌い方を変え一人で何役もこなしている。歌の引き出しが多くそれをコントロールできているからか一人なのに完成度が高い。ラップパートも新鮮だしもちろん悪くないんだけど、アクセント的に別の人の声質で聴きたくなるってのは、グループ時代から聴いている副作用なのかも。何回聴いても聴きどころが詰まってて音も豪華で飽きないし、大サビの、一瞬パァーッと解放される感じも良い。

10.ドラキュラ
前Twitterで書いたものを引用。

サウンドは基本80年代洋ロックのような感じなんだけど、小林さんのキャッチーで色っぽい詞と相まって古き良き昭和の歌謡ロックを彷彿とさせる。アンルイスとかジュリーとか桑名正博とかのド派手でセクシーなあの感じ。手越くんのダイナミックで艶っぽい歌声と親和性高い。

「歌謡ロック」は当時はおそらく「あれはロックじゃない」って馬鹿にする意味合いで作られた言葉なんだろうけど、歌謡曲ファンの私からするとロックのかっこよさに歌謡曲のキャッチーさと色っぽさが融合している大好きな系統。
このドラキュラを歌謡ロックだと思って聴いてるのは私だけかもしれないが、令和にこのタイプの曲をど直球でやってくれるのは嬉しい。あの頃が好きな人たち!みんな聴いて!と思う。

Twitterでは中森明菜を連想するという感想もあって、ああ確かに、と思った。このメロディは明菜さんの声がすごくハマる気もする。明菜さんは陰が魅力の人だけど、手越くんが歌うと闇も不思議と煌びやかなんだよね。

11.御どれ踊れや己が苑
ボカロP作曲だからか、ボカロ大好きうちの下の子(中3)の最推し曲。時代に合った言葉遊びや界隈の闇属性は手越くんの感性と対極にありそうなのに、解釈含めとても良い。とにかく、声質なのか技術なのか、このスピード感で言葉を乗っけても、すっきり耳に入ってくるのが最強。
ボカロPの作品はウインクにしてもうちの中学生受けがとにかく良いので、幅広いファン向けにこれからもどんどん歌って欲しい。

12.Ready Steady
前回のミニアルバムに収録されていたこの曲が今回はエンディング曲として収録されている。手越くんはいろんなタイプの歌が歌えるけれど、その中でもニュートラルでストレートな印象の曲。曲のリストを見た時は、リミックスでもなく全く同じ曲?と思ったけど、通して聴くと、バラエティに富んだアルバムの最後に、自由を歌うこの曲はとても良い選曲な気がした。

以上になる。アルバム全曲の感想とか書くの初めてだな。


以前Twitterでこのアルバムについてこんなことを書いた。

手越くんの1stは良盤だしミニアルバムも捨て曲無かったけど、今回の2ndアルバムは「一般の型にはまらないタイプの名盤」という感想。手越くんの歌唱技術が目一杯詰め込まれバラエティ豊かで全曲完成度高い。でも曲順がアルバムとしてはどこか独特な気もして、それも含めて面白い。

おそらく、手越くんの生き方への共感や強い愛情がある方は、歌詞の一つ一つに手越くんを重ねることがあると思う。そういう意味でも濃いアルバムだ。私は外の文脈で音楽にある種の付加価値を与えたりせず作品だけで楽しめるならそれに越したことはない、と思っているので、その点においては若干淡白な上のような感想になる。

私は昔からアイドルポップスなどを好んで聴いてきて、その時期時期に愛したアルバムがある。よく挙げるのは、金井夕子「écran」、渡辺美奈代「恋してると、いいね」、原田知世「GARDEN」、宍戸留美「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・シ・シ・ド・ル・ミ」、鈴木蘭々「Bottomless Witch」、藤井隆「ロミオ道行」、NEWS「LIVE」、など。

基本的にアイドルって悪い大人に歌わされていて、その媒体を介した大人たちのセンスを見るものなんだな、と実感したのは、渡辺美奈代の「恋してると、いいね」を愛聴していた頃だろうか。美奈代ちゃんをおじさん達の色に染めちゃうね!ってなんて素敵なんだろうと。(2015/01/12)

上に挙げたアルバムについても、どちらかというとライター陣が提供した楽曲が好きってパターンが多かった。アイドルそのものでなく、そのアイドルにそういう音楽をさせている背後の「悪いおじさん(比喩)」達の思惑が好き、とでもいうんだろうか。かなり気持ち悪いことを言っている気もするが。

NEWSで少し違ったのは、楽曲が好きということに加え「グループアイドルの声質と歌割り」の面白さに目覚めたということ。初めて、声質のばらつき、バランス、声の配置の絶妙さ、異なる声質のハモリの良さになどに気付かされたというか。あれは目から鱗だった。
でも、やっぱりそれも、歌割りを決め、声をミックスしている背後の「悪いおじさん(比喩)」が好きだったのかもしれないとも思うのだ。

でも、このアルバムはその悪いおじさんでなく、純粋に手越くんの歌唱技術が好きだと思う気持ちが一番にくる。もちろん楽曲が良いのは前提として。だから歌を聴きたくてライブにも足を運んでしまうんだと思う。


去年の手越くんの誕生日に以下のようなツイートをした。

自分のストロングポイントはいろんな歌を歌えること、と手越くんがインタビューで語っていたけど、手越くんのストロングポイントはまさに、手越くん自身がそう思っているところ。どんな歌も自分なりに研究して攻略していくから、世の中の歌の数だけボーカルに可能性があるって最強なのでは?(2022/11/11)

「手越くんがいろんなタイプの歌を攻略していっている」
結局私が感じる「CHECKMATE」の良さはこれなのかもと思う。

これからも、3rd、4thアルバムと、手越くんの新しい歌との出会いと、攻略した作品を楽しんでいきたい。それにはまずもっとこのアルバムが評価されて欲しいなあ、と思うのだった。