十六歳未満

 十六になった友達に言わせると
 もう結婚できるんだそうです
 十五を保っている私に言わせると
 彼女はもうおしまいです
 結婚という菌が
 少しずつ侵略を始めて
 自分が踏み壊されていく
 そういう恐怖の幕開けなんです
 へらへら笑っているなんて
 どういう神経の持ち主なんでしょうか
 わあ 十六歳なんてやだあ
 どうしよう とか
 少しくらい嘆いたらどうですか
 もちろん私なら泣きながら
 お葬式ケーキを一人で食べます
 凍結しそうな二月の部屋で
 戯れつく想いをころします
 その日はきっと雪が舞い
 ろうそくの火をゆらゆらゆらし
 私のために泣くでしょう

 一つ年をとり
 可能性を二つくらいなくして
 妥協が三つ
 こころのしわがまた四本
 だから思います
 結婚待ち合い室は
 きっと満員です
 私はそこで当然のように
 女性週刊誌を手にします
 〆切は二月十日
 私は絶対老いるのです


1981年か1982年、 新潟日報読者文芸 生活詩 に掲載。

あまりにもコドモでこっぱずかしい詩なのだが、大人の詩の中に紛れ込んでいる子供の詩が新鮮だったのかもしれない。
その1年間「生活詩」に掲載された詩を対象にして審査した日報詩壇賞というのがあって、唯一佳作に選ばれた作品。基本的にビギナーズラック。