午前四時三十分

 頭痛が僕に何か叫んでる
 うん実は同感なんだ
 僕もあっちで畳になりたい
 でもここで息をついたら
 単語が干からびでしまうだろ
 昨日はベクトルのやつが裏切るし
 一昨日だって周期表が事故おこすし
 僕の戦は散々なんだ
 だから臥薪嘗胆しかないよ
 苦しくたって耐えなさい
 君だけじゃない
 左目なんか充血して
 油断すると涙がぽろぽろでちゃうんだぜ
 足なんかほとんど氷だし
 右手の親指は感覚さえも失ってる
 なのに愚痴一つ言わないし
 誰も怠けないだろ
 ほら見てごらん
 僕の額
 いつのまにかすっかり初老
 泳げそうなくらいのしわの束
 けどね
 嘆いちゃ終わりなんだ
 今日こそは仇を討って
 逆転優勝しなきゃなんない
 そしたらみんなにも夜を
 力一杯ほおばらせてあげれるさ

 これは、時計の音?
 それとも頭痛の泣き声
 まあいいや死んだって
 今日一点でも多くとれたら
 明日死んだってかまわない
 あと三時間
 仕上げのダッシュ
 でも今、ひょこっと
 おう吐が顔を出した


 新潟日報読者文芸 「生活詩」掲載分。 1982年頃?