山積み便箋/大竹まことのオールナイトニッポン

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 私は深夜番組を継続的に聞いた経験は殆どない。唯一、毎週頑張って聞いていたものが「大竹まことのオールナイトニッポン」なのだった。だが、この番組、オールナイトニッポンの歴史が綴られた本にも全く載っていない。それには理由がある。大竹まことは正規のパーソナリティでなかったのだ。
 ビートたけしが「傘」「消火器」のキーワードで思い出させられる事件で謹慎をしていた時期、穴を埋める形で担当していたのが大竹まことだった。私は、大学1年の時に初めてテレビ東京の「おもしろプレヌーン」という番組に出ていた大竹まことを見て、それまでの自分の路線とは全く違うタイプなのにファンになっていた。そういう年頃だったのだろうか? ちなみに、その頃から現在まで私の嗜好は変化していない。
 当時、ビートたけしはオールナイトニッポンの重鎮であった。そのたけしの穴を埋めるのだ。もし、大竹まことのファンだと言うなら聞くべきだろう。
 いつ眠ってもいいように120分テープで録音をしながら布団に入って聞いていた。しかし聞きながら眠れるほど器用でなく、結局いつも最後まで聞いた。
 聞いているうち、思った。リスナーから送られてくるはがきのレベルが低いのではないか? もしかしたら、私でも書けたりしないか?
 実は私は面白い「ネタ」を書くのがとても苦手である。10代に読んでいたビックリハウスという投稿型の雑誌でも、おもしろネタを送って採用されたためしがなかったので、自覚ははっきりとあった。
 私は早速番組にハガキを送ってみた。ファンらしく、番組に「参加」するのだ。
 そして、やはりレベルが低かったのか、1回目で読んでもらえた。そのネタに関してはここでは触れない。
 大竹まことは番組中、「はがきを読んだ人にあげるための、番組オリジナル便箋を作る。発注済だ。もうすぐできる」という話をしていた。それを聞きながら夜中布団の中で私は「大竹まことオリジナル便箋、絶対もらってやる」と強く決意した。私はネタをせっせと考えてメモをした。
 しかし、その翌週くらいだろうか。ビートたけしが突然復帰した。復帰したと聞き、信じられずにオールナイトニッポンを聞いた。聞こえてきたのは久しぶりに聞くビートたけしの声だった。世間は、たけし復帰、たけし復帰、たけし復帰万歳、である。
 オリジナル便箋はどうするのだ? 大竹まことは、番組で便箋を披露することもなく、さよならも言わずに去って行ってしまった。

 それからしばらくして私は「夕やけニャンニャン」を見ていた。その時、当時レギュラーだった大竹まことが山積みにしてある便箋を指し、「便箋を作ってみました。それだけです」と脈絡なく言い、何事もなかったように本題に入っていった。
 その後、彼がその便箋をどう使ったかは知らない。私の手元には、番組から記念に送られてきた「ニッポン放送原稿用紙」だけがある。