夢の生活/あいはら友子

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 私は念願かなって最近食器洗い機を買った。私の中で「食器洗い機」といえばこの人、あいはら友子である。
 この人のことはそれまでさほど気にとめていなかった。彼女の出ていたドラマは殆ど見たことがなかったので、特に思い入れも無い。「相原友子」から「あいはら友子」に改名した時も、「どっちにしても地味」としか感じなかった。話はそれるが、人が心機一転で平仮名に改名すると、「文字が増えて新聞のテレビ欄に収まらなくなって不利なのでは?」と心配になるが、どうなのだろうか。三原じゅん子といい…。

 あいはら友子が「マネー」方面で仕事が増え、大忙しだったと思われる頃のことだ。多分私はまだ学生だったと思う。雑誌記事で彼女へのインタビューがあった。「家庭と仕事の両立」「3足のわらじ」といったテーマで、あいはら友子は次のような内容のことを語っていた。
「私は忙しいけれど、家事もちゃんとやります。そのかわり、割り切って機械にできることは全部機械にさせます。食器洗いは食器洗い機を使っても、料理は子どものためにきちんと自分で作る。その方が大切なことだから」
 私はこの言葉にとても感心した。家事を自分で全部することを美徳とするのではなく、このような考え方があるのかと。そして、存在すらよく知らなかった、その「食器洗い機」のある暮らしがキラキラと光り輝いて見えた。しかもその記事によると、彼女の家のアンペア数は「☆△○アンペア」なのだ!(数字失念。だが、間違い無く3桁で、当時10アンペアのアパート暮らしをしていた私には想像を絶する大きい数だった。)家電が充実していることをそのアンペア数が如実に語っていた。

 それから私の夢の家電として位置付けられた食器洗い機を、それからだいぶ年月は経たが、遂に購入した。あの不愉快な食器洗いを文句ひとつ言わずにやってくれる素晴らしい家電だ。だが、「音がうるさい」だの「手で洗った方がはやいんじゃないの」とか、自分でやりもしないくせに文句を言う人というのが必ずいる。そういう人や購入を躊躇している人にも、あの、あいはら友子の言葉を紹介したい。が、なにぶんにも、
「あいはら友子の言葉にも有るんだけどね」
といっても説得力がないところが悲しいところだ。